某リサイクルショップを辞めた話

ブラック会社の定義ってのはたくさんある。

 

もちろんパワハラモラハラ、セクハラなんかのハラスメント系も含め、勤務時間が長すぎるとか、その割に給料も安いとか。

 

ブラックとまではいかないが、働く側にとって融通がきかないこともある意味グレーゾーンだと思う。

 

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少し前に、上の内容の記事を書いた。

 

ここの職場は圧倒的にブラックだったし、思い出すのも憚られるほどだ。

 

だがしかし、人間関係や職務の内容や、過度な期待ですらブラックの要因にはなり得る。

 

そんなふうに思ったのが、この「某リサイクルショップ」で働いていた時だった。

 

 

この店で働き始めた理由は「オープニングスタッフ」を経験したことがない、ということからだった。

 

一昨年の10月くらいの募集に滑り込み、何とか即日採用の電話をもらうことができた。

 

この時らへんの俺は今と違って「落ち着く」ということを考えていた。

 

実際に髪の色もこの時らへんはかなり黒に近かったし、そんなに長くもなかった。

 

なので、普段探している「髪色自由」というもので仕事を探す必要はなくなった。

 

オープニングスタッフのいいところといえば、先輩や後輩といった上下関係が極端に少ないことがメリットであるように思う。

 

たまたま地元にオープンするという求人広告を見つけ、もともと別の店舗に行くのも好きだったから、きっと好きな仕事だと思い込んだ。

 

やっぱり接客業が好きだから、接客業で生きていきたいと思っていた。

 

同僚にも、上司にも、恵まれたと思った。

 

語気が荒い人もいなかったし、仲良くやれていたと思う。

 

オープンまでの準備期間は、かなりの体力仕事だったが、体の疲れくらいはどうにかして誤魔化せた。

 

今となってはなんの自慢にもならないことだが、俺は接客業では褒められることが多い。

 

単純にノリがいいというか、接客は丁寧に心がけてるし、対応を褒められることも多い。

 

仕事を覚えるスピードが早い、というのもあるが、それを新人に教えるのも上手な方だと思うし、怒ることもない。

 

新人にも慕われることが多いし、単純にバイトリーダーのような立場を任されることも多い。

 

それでいて、上司の言うことは忠実にこなす。

 

どう見ても理想のスタッフだ。

 

違和感に気づき始めたのは、オープンしてから2ヶ月ほどだったから、入社して3ヶ月くらいの頃だったように記憶している。

 

ちょうどその頃、持ち込まれた品の査定業務を教えられ始めた。

 

別に査定なんかやりたくなかった。

 

なんでかって「接客」の時間が圧倒的に減るから。

 

だけど、上司の命令には忠実。

 

逆らえないのは忠実なのではなく、弱さだということに気づかないフリをしていた。

 

 

その店舗では、自発的に仕事をしない人が多かった。

 

特に接客業で初めての場合、電話の応対業務をやりたくない人は多い。

 

だが実際に、電話の応対業務に関しては言葉遣いをしっかりした上で、何度も電話をとらないと覚えれない。

 

それを再三言ってるのに、やはり皆はとりたがらなかった。

 

いや、とってくれる人もいるが、そういう人はだいたい仕事ができるので、別の業務を振られていて近くにはいない。

 

電話じゃないにしても、レジも、通常の接客もやりたがらないスタッフとシフトがかぶるとやりにくくて仕方なかった。

 

あるとき、それでとあるクレームが入る。

 

原因は俺ではなかったが、俺もそのことが起こりえないか危惧していたことだった。

 

 

俺と仲の良いスタッフで、同じくらい仕事ができる奴(以下、R)がいた。

 

Rが他のスタッフの尻拭いをしていたことにより、査定の終了を客に伝え損ねていた。

 

それがクレームになり、本社にまで連絡がいった。

 

実際に責任はRにあるとは思う。

 

きちんと最後まで確認をしていなかったのは、Rの責任だ。

 

だが上司や、その会社のお偉い方は、一方的にRを責めるだけだった。

 

その日のシフトに、俺は休みでいなかったが、他に出勤していたスタッフを見るとさすがにひいた。

 

ほとんどが新人で構成されていたからだ。

 

Rは言い訳をしなかったが、実際にその新人のために使った時間でミスが起こり得ることは容易に把握できた。

 

結局店のほとんどをRが回していたことになる。

 

できないことはなさそうだが、ミスが起こる可能性は充分にあった。

 

悪いのはRだが、そんなシフトしか組めないような環境にしている上にも責任はあると思った。

 

次の日から、いじめとまではいかないが、社員からのRへの圧力が強くなった。

 

俺は何も言えず…というようなことはなく、Rと一緒に行動するようにした。

 

その時から、その会社に愛想が尽きはじめていくことになる。

 

 

自分たちの落ち度は認めず、その反省もせずに都合のいい時だけ擦り寄るくせに、頑張りは評価されない。

 

そんな社会の縮図を知ってしまった。

 

本当に知らなかった。

 

頑張りは認められると思ってたし、頑張った分だけ何かが返ってくると思っていた。

 

でも実際に、会社は何も俺らにしてくれなかったし、スタッフルームに貼ってある会社の理念には「スタッフは大事」なんて書いてあるが、そんなこと思ってすらない。

 

ブラック認定されたくないだけの上辺だけの対策。

 

そして、社員同士の話し合いという名の一方的な差別も目立ってきた。

 

入ってしばらく働き方を見て「使えない」と判断すると仕事もほとんど教えない。

 

そのしわ寄せは、結局ほかの業務をさせられてる俺やRにくるのだった。

 

俺もRも、そして仕事が比較的できるスタッフも、このことには気づいていたし辞めたいと他のスタッフも思っていたのかもしれない。

 

そんなある日、Rが出勤と同時に俺に耳打ちしてきた。

 

「すまん。昨日の夜、辞めるって言ってきた。」

 

Rは芯が強い。

 

俺みたいに辞めると言えない人間とは違う。

 

でも辞めたい気持ちは同じだった。

 

その日の夜中を待ち、俺も店長に「明日、お時間もらえませんか?」とLINEして、その文の中に「辞めようと思います」と付け加えておいた。

 

今までの俺だったらきっと逃げていたけど、このままだとこの会社に飼い殺されると思った。

 

意外に辞める話はスムーズに決まった。

 

しかし、フルタイムで正月もクリスマスも出勤していたRと俺がいなくなるのは相当な痛手になるのが予想できた。

 

この時に思っていた言葉は、

 

例え何人辞めても会社は回り続ける

 

というもので、辞めてもいいんだ、と自分に強く言い聞かせた。

 

伝えてから、一ヶ月周りの目は少し痛いかもしれないけど。

 

 

その日から社員の俺とRに対する扱いが変わり始める。

 

近くにいるだけで、ため息や「きつい」などの言葉を延々という。

 

些細な嫌がらせだったのかもしれない。

 

Rは露骨に腹を立てていたが、当時メンタルの弱かった俺は「悪いことしたかな?」なんて気になっていた。

 

こっちだって、辞めたくて働き始めたわけじゃない。

 

俺だって、Rだって真剣に働こうとした。

 

それだけは絶対に間違いなかった。

 

辞めようと思われる会社にも問題はある

 

そう思うことで何とか誤魔化した。

 

きっと何かを辞めることに関しては、人はネガティブでマイナスイメージが付きまとう。

 

それが社会的に恥ずかしいとか、人間関係を悪くするかも、とかよくわからない防衛本能を働かせる。

 

単純に考えすぎだ。

 

別に死ななきゃ大丈夫だし、そんな人間関係なんてクソくらえだ。

 

 

 

会社の経営理念やら、そういうのを誇らしげに掲げてくるところには何らかの影がある。

 

実際に社会は、下を利用する形で回っている。

 

それは正義とか正しいとか、間違いとか悪じゃなくて、そういうものなんだ。

 

だから異論を唱えるとか、真っ向からぶつかるとか、そういうのが馬鹿らしい。

 

嫌なら、合わないとわかったら、辞めてしまえばいいだけなんだ。

 

そういう事実を隠して「スタッフが大事」なんてことを主張する、でも実際にスタッフの身に何かが起きた時に会社は助けちゃくれない。

 

特にそういうことを掲げているところがそうだったから。

 

現実を知れた、そう思った。

 

社会は、会社は俺らに優しくなんてない。

 

もっと人は自分のことだけ考えてもいいはずなんだ。

 

俺はこの仕事を辞めて本当に良かったと思った。

 

 

これはちょうど、今から一年ほど前のお話。