いじめられてた時の話〜「見返したい気持ち」が生んだ結果なのか〜
中学生の頃、俺はいじめられていた。
みんなを見返したいという気持ちは、誰よりも強いと思っている。
今回の記事はそんな俺の話じゃなくて、俺と一緒によくいじめられるほうのグループにいたやつの話。
名前はSという。
そいつとは同じ部活をやっていた。
今の俺がこんなふうなルックスなので意外に思われるけど、柔道だ。
二人とも柔道をしていたとしても、度重なるいじめに反抗する力は持っていなかった。
そいつと仲は悪くなかったように思う。
もうずいぶんと会ってもいないわけで、話してないし、詳しく何をやっているのかなんて知らない。
ただ、学校の教師をしているというのは聞いた。
昔同じ学び舎にいた頃は、そんなに頭は良くなかったはずだった。
俺と同じくらいか、少し上くらい。
そんなイメージ。
結構な堅物で、空気を読まない。
いじめられてはいたが、今思えば強いやつだった。
俺がまだ一年の時に、中学の時に生徒会長をしていたTくんという人がいた。
Tくんはルックスも良く、頭も良い。
サッカー部に所属していて、生徒からの人気もあった。
Tくんの親は、俺の親と仲が良かったから、小さい時から遊んでいた仲だった。
少しだけ、いじめの対象が逸れた。
Tくんと仲がいいうちは、俺をいじめるやつはそうはいなかった。(一年生の時だけ)
同学年の女子からは「Tくんの写真がほしい」なんて頼まれたりもした。
その時の俺は、まさにドラえもんで言うところの”スネ夫”のような感じだったのかもしれない。
さて、今回の記事の主役たるSは、俺がいじめられなくなってもいじめられていた。
家庭環境が良くなかったことが原因なんだと思うが、あの時の俺は臆病者だった。
助けるなんてできない。
よく道徳の授業なんかで「いじめを助けないやつも同罪」なんて言われるが、
その場合の「いじめを受けたことがある人」と「そうでない人」の罪が同罪とは思えない。
再びいじめられるかもしれない恐怖に、どうやって勝てばいいんだ?
教えてくれ、クソみたいな道徳の授業よぉ。
高校に入ると、Sとは会うこともなくなった。
家も近所ではないし、高校も違う。
俺は幸いいじめる側のグループと仲のいいやつと仲が良かったし、
高校のメンバーで集まった時も、いじめる側に関わらないでいればいいだけだから。
でもSはこなかった。
きっと皆に会いたくないんだろう。
ひどすぎるいじめということはないが、残りの中学2年と3年の時の俺のダメージが尾を引いているのを考えたら当然だ。
それから時は流れ。
二十歳になった。
俺は成人式の時、東京で餓死しかけていた。
あ、ちなみに俺とSは十日違いの3月生まれだから厳密には19歳の時だ。
俺は東京にいるもんだから、地元のみんなとも連絡はとらなかったし、
Sのことなんて何も知らなかった。
それでいて、月日は流れていく。
久しぶりに話した親が言っていた。
Sは、とある有名な高校の教師になっている。
俺からしたら勉強もできない、気も強いわけではない、頑固なだけのやつだった。
もう数年間働いているのだという。
親は続けて話した。
その学校に臨時職員という形で、中学の時の先輩のTくんが先日やっと働けるようになった、と。
それまで浪人だったり、免許がとれなかったり散々だったらしい。
その学校での権威も、立場も、歴もSの方がTくんより上。
話を聞いたとき、これは下剋上なのかと思った。
同じようにいじめられていて、同じような学力の、融通のきかない頑固なやつだった。
Facebookを何となく見てみた。
子供を抱きながら、幸せそうな顔をしていた。
30歳でやった同窓会2の時。(俺は1に行ってないけど)
Sは来なかった。
連絡先も、誰一人として知らないという。
彼は、きっとこの学年が嫌いなのだ。
俺だってあんまり好きじゃない。
きっと、Sはもうこの学年の誰とも関わりたくないのだ。
あいつは、きっと同じ学年のみんなを見返すために、自分を変えた。
自分の過去を、もっといい未来に変えていけるように、強くなった。
そのための行動をした。
その結果、別に地元の同級生に対して見返すとか、そういう感情もなくなったのだろう。
地元ではスーパーエリートになったと噂されるレベルだ。
事実は知らないが。
そこまでストイックに追い込んだ結果。
だが、きっと彼は見返したい気持ちが最初は強かったのだと思う。
Sは人生を自分のものにした。
俺はまだ見返したいなんて気持ちにとらわれてる。
だけど、この原動力を捨てたら俺じゃないんだ。
もっと見返していかなきゃいけない。
その気持ちが何も生まないだとか、そんな感じのことを綺麗事のように言われることがある。
だけど、それすら見返すために。
俺は歩みを止めてはならない。
Sのことをカッコイイと思う。
いつか胸張って会える日が来たら、話をしてみたい。
ちなみにSはFacebookで地元人の承認をしていないので、メッセージも送れない。
生徒に囲まれてる彼の写真は幸せそうだった。